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『自堕落人間半生記』~大和 六歳①

その年、私は小学校に上がった。

襟元に白いフリルがついた黒色のワンピースを着て、入学式に臨んだ。

私の母校は、当時(いや、今でもらしいが)県下ナンバーワンの巨大校であり、また第二次ベビーブームであったことから、式当日の混乱ぶりは凄まじかった。

数百人の新一年生が、会場となっている体育館を所狭しと走り回るのだ。

親の注意なんか聞いちゃいない。ましてや教師の呼びかけなんぞ、どこ吹く風だ。

朝早くから気合いを入れて着飾ったであろうスーツも髪型も、式が始まる前にすでによれよれである。それほどみんな興奮していた。

体育館入口に受付が設けてあり、そこで、それぞれが配属されるクラスを知らされる。

自分のクラスを確認したら体育館に入り、クラスごとに分かれて着席する。

たったこれだけのことに、そうとう時間がかかったように思う。

親は離れた保護者席にいるので、開放感たっぷりの子どもたちのテンションが、おかしいくらいに急上昇した結果である。

しかしそんな中、私はひとり、大人しく座っていた。

別に礼儀正しい子だったわけではない。

普段の私なら、一緒になって騒いでいたであろう。

しかしこの時の私は、そうは出来なかった。

なぜなら、私が配属されたクラスに、知っている子が一人もいなかったからだ。

私が卒園したB保育園は、確かに賑やかではあったのだが、他の保育園・幼稚園と比べると、やや規模は小さいほうであった。

それでも誰か一人くらいは同じクラスになるだろうと踏んでいたが、ものの見事に、私一人だけがあぶれてしまった。

・・・なにか悪いことをしただろうか? 全く身に覚えがない。

いや、正確には男の子が一人、B園から上がっていたのだが、ほとんど交流のない子だったので、あまり頼りになりそうも無かった。

そんな心細い思いであたりをきょろきょろと見回し、ふと振り返ったとき、はるか後ろのクラスに座っていたさくらちゃんと目が合った。

さくらちゃんの隣には、当時、私の初恋の相手であった杉山くん(仮名)がおり、さくらちゃんと楽しそうに話をしていた。

私に気付いたさくらちゃんは、なんとも得意げに微笑むと、私のほうを指さしながら杉山くんに向かって何か言い、今度は二人でくすくすと笑った。

その時のシーンは、今でも鮮明に覚えている。

さくらちゃんの勝ち誇った笑顔は一生忘れないだろう。

実は在園当初から、私とさくらちゃんは、杉山くんを奪い合っていたのだ。

「え? まだ幼児でしょ?」なんて思ってはいけない。

幼児にだって、恋の駆け引きはあるのだ。

さらに悪いことに、この杉山くんがとても優しい子だったので、積極的に攻めてくる二人を無下にあしらうことができず、いつも私たちの間を行ったり来たりしていた。

私とさくらちゃんの対立の最大の原因は、この杉山くんだったかもしれない。

その杉山くんとさくらちゃんは、小学校では同じクラスになった。

お遊戯会の一件で、私はさくらちゃんに負けを期しているだけに、これにはトドメを刺されたと言っても過言ではない。

・・・何か悪いことをしただろうか? 全く身に覚えがない。

この頃はまだなにもしていない。

後に私とさくらちゃんは、二人で大馬鹿なことをして、親からも教師からもこっぴどく叱られるのだが、それはまた次の機会に話すとしよう。

今回は入学式である。

二人の蜜月っぷりに当てられて、ふてくされたように黙り込む私に、一人の女の子が話しかけてきた。

久美子ちゃんだった。

B園の前に通っていたA園で、もっとも親しくしていた、あの久美子ちゃんだ。

私は飛び上がらんばかりに驚いた。

まさか久美子ちゃんと同じクラスになっていたとは・・・。

自分のことばかり気になっていて、周りが見えていなかったのだろう。

声をかけられて、初めて久美子ちゃんに気が付いた。

久しぶりに再会した久美子ちゃんは、相変わらず小さくて可愛い子だった。

私は嬉しくて嬉しくて、思わず久美子ちゃんと手を取り合って喜んだ。

(もうこれで寂しくないぞ。久美子ちゃんがいるんだもん。私は大丈夫)

と安心しながら振り向くと、今度は、こちらをじっと睨みつけてくるさくらちゃんと目が合った。

さきほどまでの得意げな表情はどこへやら。あきらかに、さくらちゃんは私を睨んでいた。

ようするに、自分の知らない相手と私が、仲良くしていたのが気に入らないのだろう。

ワンピースに穴が開くんじゃないかと思うほどに、さくらちゃんからの視線は痛かった。

いや、おそらくこれは、私がついさきほど、さくらちゃんに送った視線である。私はこんなにも鋭い視線を送っていたのか。

子どもとはいえ、まっこと女は恐ろしい。

もちろん私は、にこりと得意げに笑ってみせた。


こうして私の小学校生活は始まったのである。

このわずか一週間後、私のクラスで衝撃的なことが起こる。

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神無月 大和

Author:神無月 大和
         

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