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『自堕落人間半生記』~大和 九歳


この年、私は運命的な出会いをする。

私は、もっと幼い時分から本を読むのが大好きだった。

外で遊ぶのも好きだったが、家にいるときは、ひたすら読んでいたと思う。

二年生の時に学校の図書室で出会った児童書『にわとりとかけた運動会』という本は、本当に大好きで、当時の貸し出しカードを見ると、一年間で数十回も借りていたことがわかる。

ただこの本、作者やストーリーを全く覚えていない。

子どもが学校で飼っていたニワトリと運動会に参加するみたいな話だったと思うが、記憶が定かでない。

しかも、すでに絶版になっているらしく、ネットや市の図書館で調べても全くヒットしない。

カードに記載されている以上、私が読んでいたことは間違いないし、表紙もなんとなく覚えているので、捏造記憶というわけでもない。

この作品が、私の本好きに拍車をかけたといっても過言ではない。

だから学校の図書室にあった児童書は、片っ端から読み漁った。

と、同時に、私はテレビで放送されていた二時間サスペンスが大好きな子どもでもあった。

いまでも毎週放送されているアレである。

金サスは有名だが、月曜日や土曜日にも放送されることがあった。

毎週、わくわくしながらサスペンスを見るのが楽しみだった私は、だんだんとサスペンスの血が騒ぐようになり、そのうち次週までの待ち時間の長さに苛立つようになった。

なんとか毎日見れなものだろうか? 時間を気にせず、もっともっと見ていたいのに・・・と思うようになったのだ。

その時、ふと思いついた。

(こういうの、本ではないのかな?)

・・・当たり前といえば当たり前のことなのだが、当時の私にとって、本といえば、おとぎ話や童話といった児童書が全てだったので、ふと思いついた自分の閃きに鳥肌が立った。

そして、すぐに向かった図書室で、私は驚きの光景を目の当たりにしたのだ。

小学校の図書室は入り口を入ってすぐの棚に、低学年向けの児童書がずらりと並んでいる。

蔵書数はなかなかの規模だったので、児童書だけでも相当な数を誇る。

ゆえに、私はその区域だけで満足出来ており、室内の奥まで入ったことがなかったのだ。

その時、初めて奥のコーナーに足を踏み入れた。

高学年生がうろうろしている背後に、それはあった。

『〇〇殺人事件』
『〇〇の事件簿』
『〇〇探偵団』

などなど。

まさに私が欲していたミステリーコーナーだ。

(やっぱりあった!)

と、まるで宝物でも発見したかのように、私は大興奮で走り寄った。

しかし、ここでやや残念なことが起こる。

なんせ私は当時、まだ九歳だ。

難しい漢字が読めない。

「事件簿」も「探偵団」も、まだ私のレパートリーにはなかった。

つまり、私が理解できたタイトルは『〇〇殺人事件』といったものだけなのだ。

殺人事件という言葉は、二時間サスペンスで嫌というほど見てきた。

これだけは分かる。

ほかの本もおそらくミステリーなのだろうが、物語の性質が分からない。

私は殺人ものが読みたいのだ。

・・・こう書くとなんとも物騒な小学生だが、本当なのだから仕方がない。

もともとホラーやオカルトに興味があったから、ミステリーも、人が死んでこそだと思っていた。

この考えは今も変わっていない。

数あるミステリーの中から私が手に取ったのは、アガサ・クリスティの『ABC殺人事件』だった。

これだけはタイトルが読めた。それだけの理由だ。

ろくに中も確認せずに借りてみた。

この瞬間、私のミステリー本大好き人生が始まった。

さっそく家に帰って読んでみたが、正直なところ、内容はさっぱり分からなかった。

当然である。

なんせ相手はアガサ・クリスティだ。

名探偵ポワロだ。

しかも、それまで全く読んだこともない海外図書だ。

登場人物のカタカナ名やイギリスの生活習慣や文化など、片田舎に住んでいる小学四年生にとっては、まさに未知の領域である。

そう簡単に理解できるはずもない。

しかし、それでも私は衝撃を受けた。

犯行の動機やトリックは分からないものの、『名前のアルファベット順に殺人が起こる』という設定が、とても新鮮だったからだ。

ネタバレになるから詳しくは言わないが、映画館でのワンシーンも衝撃だった。

細かい部分はさっぱり分からないまでも、名探偵ポワロは、日本に住む一小学生をミステリーの虜に仕立て上げたのだ。

そこからの行動は早かった。

あんなに通い詰めた児童書コーナーには見向きもせず、卒業するまで、ひたすらミステリーコーナーを荒らしまくった。

ミステリーだけではなく、イギリス文学そのものに目覚めたのもこの頃だ。

ポアロはもちろん、冒険家クラブやホームズ、マガーク探偵団などなど、どうやらイギリス文学は私の肌に合うようで、大人になった今でも、好んで読んでいる。

ほかにも、『十五少年漂流記』や『トム・ソーヤの冒険』など、海外の作品を中心に読んでいた。

このように、この時期は、私は海外図書ばかり読み漁り、日本ミステリーは全く読まなかった。

児童書はちょこちょこ読んでいたのだが、ミステリーには拒否反応を起こしていた。

・・・実を言うと、ある日本ミステリーを読んだのだ。

その時は知らなかったが、この方、いまでも第一線で活躍されている超大物ミステリー作家だ。

だが・・・これがダメだった。

文体、ストーリー、スケールの小ささ。

どれをとっても、ホームズやポアロに敵わないのだ。

児童文学であるマガーク探偵団にすら劣っている。(個人的見解です)

あまりの危うさに、私は最後まで読み切ることが出来なかった。

この時のたった一冊で、私は日本ミステリーに絶望し、その後中学に入るまで、一切読むことはなかった。



たかが本。されど本。

本は時に、一生を左右する。




~了~





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神無月 大和

Author:神無月 大和
         

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