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【4】僕らは八神少年探検隊・改~第2章いざ洞窟へ

「分かんないけど、そんなにガンガン叩いちゃ」

そこまで言った時、板の裂ける音が洞窟内に響いた。

「……あ」

陽平が間の抜けた声を出す。

「あーあ。だから言ったのに」

光一が呆れたように言って、裂けた箇所をそっと指で撫でた。

陽平が叩き続けたせいで、そこだけが粉々になって崩れていく。

「もともとボロくなってたんだよ」

言い訳がましく弁解する陽平の頭を軽く叩いてから、光一は、板の向こうを覗いてみた。

暗闇の向こうから、ほんのわずかだが明かりが見える。

陽平も同じように覗いてきた。

「こっちに道が続いてんのか」

「うん。光があるってことは、外に繋がってんだね」

「じゃあ、行ってみっか」

言いながら、足で残った板を蹴り剥がしていく。
「ねぇ、ちょっと待って」
光一が、またしても不安そうな声を上げる。

「なんで板で塞がれてんの? 中は危ないってことじゃないの?」

「ホント、光一は怖がりだな。単に使わなくなったから塞いだだけだろ。大丈夫だって」

「大丈夫っていう保証は無いじゃん。あとそれから、僕は怖がりじゃなくて慎重派なの。陽平みたいな考えなしとは違うもん」

「ふん。勇敢な行動と言ってくれ」

「どこが」

渋る光一を尻目に、陽平は新しく出現した穴の中へ滑り込んで行った。

「うわ。さらに狭くなってんじゃん」

なぜか楽しげに呟く陽平の声を聞きながら、光一はため息をついて、無残に破壊された板の間をくぐった。

……大丈夫だよね。明かりは見えてるし。

なんとなく自分に言い聞かせながら、再び陽平のあとを追った。



*  *  *  *  *



光に向かって行くせいか、先ほどよりは、ほんのりと内部の様子が見えるようになってきた。
ゆるやかではあるが、頭が天井に着きそうなほどの高さしかない下り坂を、地面に手を付きながら降りていく。

なんせ辺りは薄暗い上に、コロコロとたくさんの小石が散らばっているので、危なくて仕方ないのだ。

時折、足を取られそうになりながらも、互いに支えあって先を急ぐ。

横幅が両手を広げればいっぱいになってしまうほどの広さしかないのが、せめてもの救いだろうか。

人間、無駄に広い場所は、かえって落ち着かなくなるものだ。

谷との距離を目測しただけではあるが、そう長い道のりではないように思う。

二人は無言で進み続けた。やがて道が平坦になり、高さにも余裕が出てきたあたりで、ようやく二人は立ち上がった。
軽く手を払って、再び足を進めようとしたその時、ふいに光一は、肩を叩かれたような気がして動きを止めた。
怪訝な顔で振り返ったが、誰かがいるようには見えない。
試しに薄闇の中で手を動かしてみるが、ザラザラとした岩肌以外に、手に触れるものはない。

……気のせいかな。

そう思い直した光一は、それ以上は追及せずに、前を歩いている陽平に声を掛けた。

「もうすぐ出口かな?」

「だと思うぜ。けっこう進んだような気ィするし」

陽平が楽しげに答えた。

「下りが意外に長かったな。そんな気がするだけなのかもしれないけど。でも確実に、谷に向かって下りたはずだぜ」

「そうだね。僕もそう思う」

「それにしても狭いな。さっきの半分くらいしかないんじゃね?」
陽平がぐるりとあたりを見渡しながら言った。
「ここ、防空壕だろ。こんなに狭かったら、いざって時に逃げにくいような気がするんだけど」

「大きく掘ってる時間がなかったんじゃないかな。いつ敵がやってくるか分かんないんだもん。とにかく抜け道を完成させることを第一に……うわっ!」

突然、光一が叫んだ。

「なんだ? どうした?」

陽平が慌てて足を止める。

振り返ってみると、光一が直立不動で自分の手を凝視していた。

「どうした」

「……なんかヌルヌルしたのに触った」

光一が泣きそうな声で言う。

「気持ち悪いよぉ」

「ヌルヌル? そんなのあったか?」

「壁のほう」

試しに光一の手を触ってみると、確かに右手に、粘着質なゲル状のものがベッタリとついていた。

「うわ、なんだコレ」

思わず手を引っ込める。

暗いので、その正体ははっきりとは分からないが、お世辞にも、触り心地の良いものとは言えない。

「コケか?」

「コケってこんなヌルヌルしてるの?」

「さぁ、知らね」

「気持ち悪いよ、陽平―――」

「ハンカチは? ねぇの? じゃあとりあえず自分の服で拭いとけよ」

「ええ? やだよ、そんなの……」

「んなこと言ったって、俺だって持ってきてねぇし」

「なんで持って来ないんだよぉ」

「そういう自分こそ」

と反論してから、陽平は光一を慰めるように体を叩いた。

「とにかく早く出よう。もう壁には手をつくな。俺が先導するから、俺の肩に手を置いとけ」

「うん」

光一は言われた通りに、綺麗な左手の方を陽平の左肩に置いた。

でこぼこした道を、絶妙にバランスを取りながら進んでいく。

光一は、汚れたままの右手が自分に触れないように、少し体を反らしながら歩いた。

「お。出口か?」

陽平が弾んだ声を出す。

光一が肩越しに覗くと、前方から差し込む明かりが、よりいっそう濃くなっているのが確認できた。

「やっと出られるね。早くこの手をなんとかしたいよ」

忌々しそうに自分の手を見ながら、光一が言う。

そんな光一には構わず、陽平は頬を緩ませた。

「お宝、お宝」

出口を前に、自然と足が速くなる。

進むにつれて光が大きくなり、出口の全貌が確認できた途端、二人は我先にと、転がるように穴から飛び出した。

「うっわ、眩しっ!」

「目がくらむぅ」

闇の中から光りの中へ飛び込んだ二人は、とっさに目を覆いながらも、互いに肩を叩きあった。

「出た!」

「脱出成功!」

しばらく瞬きを繰り返していると、徐々に目が慣れてきた。

さわさわと吹く穏やかな風とともに、あたり一面に広がった草たちが揺らいでいる。

その周りを、ぐるりと木々が囲むように円を描いており、振り返った頭上には、さきほど二人が覗き込んだと思われる場所が見えた。

「やっぱり、ここに繋がってたんだな」

陽平が感慨深そうに呟く。

光一も同じように見上げていたが、ふと我に返って言った。

「あ、手」

おそるおそる自分の右手を見てみる。

陽平も一緒に覗いて、そして首を傾げた。

「なんだ、これ」

「なんだろ」

光一の右手に付いていたのは、赤茶げたゼリーのようなものだった。

いや、形状はゼリーに似ているが、手をひっくり返しても落ちないほど粘着率が高く、しかもなにやら、サビ臭い匂いもしている。

正体不明の物質に、光一が慌てて手を振る。

「うわ、取れない! どうしよ、陽平!」

またしても泣きそうな声を上げはじめた光一を落ち着かせるように、陽平が言った。

「慌てんな! 大丈夫、すぐ取れるって。拭くもん、何もないんだっけ?」


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テーマ : 短編小説
ジャンル : 小説・文学

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神無月 大和

Author:神無月 大和
         

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