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【6】僕らは八神少年探検隊・改~第2章いざ洞窟へ

*  *  *  *  *




「おい、そっちなんかあったか?」

背の高い草々の中から、ひょっこりと顔を出した陽平は、同じように草むらに埋もれている光一に声を掛けた。

「うーん。今のところ何もないよ」

「こっちもだ。もう少し奥に入ってみるか」

腰を上げた二人は、洞窟の抜け穴からさらに遠ざかり、捜索範囲を広げた。

「手がかりを見落とさないように気をつけろよ」

陽平が、まるで刑事のような口をきく。

光一が少し苦笑いをする。

「そうは言っても、そもそもどんなものを探せばいいのか分かんないんだから……」

「分かってるって。一度言ってみたかったんだよ、こういうセリフ」

陽平がニカッと笑う。

「……気持ちは分かる」

「だろ?」

再び、這いつくばるように探索を再開した二人だったが、それも五分、十分と時間が経つにつれ、徐々に二人の間に気だるい空気が流れ始めた。

「ああ、もう! 全然、ねぇじゃん!」

ついに陽平がバタリと草の上に寝転がった。

「なんだよ、何を探せばいいんだよ!」

ジタバタと足をばたつかせながら、天に向かって叫ぶ。

「お宝、どこだぁぁぁっ!」

そんな陽平を横目で見たあと、光一もため息をついて、同じように寝転がった。

「せめて、どんな物なのかが分かればねぇ」

手でうちわを作りながら言う。

この辺りは木々に囲まれてるおかげで、涼しい風が吹く。

アスファルトから立ち上る熱気よりはマシかもしれないが、それでもやはり、動き回ってる二人には、この暑さは堪える。

「どうしたもんかなぁ」

小さく呟いた陽平の言葉を最後に、その後しばらく、会話が途切れた。

二人で、ただぼんやりと空を見上げる。

鮮やかなブルーの中を、かすれたような波雲がゆっくりと流れていた。

「いい天気だなぁ」

陽平が言う。

「つい最近まで雨ばっかだったのにな」

「そだね。今年は梅雨が長かったもんね。その代わり、そんなには暑くなかったよ」

「だな。それが梅雨が明けたとたん、この暑さだぜ。まいるよな」

「もう真夏みたいだよね」

「でも、朝方はまだ寒いな。俺んち、今だに毛布使ってるもん」

「ええ? さすがに毛布は暑くない?」

「だから寒いんだって。母ちゃんも寒がりだしな。いつも『冷え性はツライわ』とか言ってるぜ」

「寒がりと冷え性は違うものでしょ?」

「そうなのか?」

「たぶん。……違ったっけ?」

「俺に聞くな」

「確かテレビでさ」

「………おい」

「寒がりは体質で、冷え性は病気で」

「……光一」

「決定的な違いは、体温が」

「光一」

「え? なに?」

「あれ見ろ」

にわか仕込みの医学知識を披露していた光一は、陽平が低い声で宙を指差したのに気付いて、言葉を止めた。

「なに?」

「見つけたぜ」

なにを、と聞き返そうとして、ようやく光一もそれに気が付いた。

「あ、バツ印」

それは、二人が飛び出してきた抜け穴の、五十センチほど上の位置にあった。

むき出しになった木の根っこが複雑に絡み合い、抜け穴を取り囲むように這っている。

その隙間を埋めるように雑草が生えており、ちょうど抜け穴の真上に当たる根っこに、バツ印が大きく深く刻み込まれている。

ただそれは、綺麗な形のバツ印ではなく、根の成長とともに歪んだのか、なんともいびつな形をしている。

それでも、バツ印であることは間違いないようだ。

二人は勢いよく起き上がった。

と、同時に走り出す。

穴の前まで行き、改めて見上げてみる。

「なるほど。下じゃなくて上だったか」

陽平の言葉に、光一が大きく頷く。

なんとなく地面や草の間ばかりを捜索していたが、考えてみれば、頭上……という選択肢もあったわけだ。

「上を探すって、全然考え付かなかったね」

光一が悔しそうに言った。

「探し物するときって、なんとなく下ばっかり見るね」

「だな。ま、人間そんなもんだろ。とにかく見つけたんだ。俺、見てくる」

言うやいなや、陽平は地面にまで蔦っている根っこに足をかけると、するすると登っていった。

元々、陽平たちがようやく通れたような小さな穴だ。

あっという間に、陽平は抜け穴の上にまで辿り着いた。

バツ印が刻まれた付近の根に手を置き、こわごわと下に向かって首を伸ばしてみる。

陽平の眼下には、抜け穴から漂う闇色が広がっていた。

「上から見ると、けっこう怖いな」

首をすくめるように身を小さくした陽平は、「よし」と腕まくりをすると、根っこの間を、慎重に調べ始めた。

その様子を下から眺めていた光一だったが、とうとう我慢できなくなり、自分も根っこを登り始めた。

「どう? なんかある?」

根にしがみ付くようにしながら問う。

「あ、お前も来たの」

「だって気になるんだもん。ずるいよ、自分ばっかり」

「悪ぃ悪ぃ。こっちに来いよ」

そう言って陽平は、バツ印をまたぐようにして反対側に移り、光一に場所を譲った。



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テーマ : 短編小説
ジャンル : 小説・文学

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神無月 大和

Author:神無月 大和
         

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