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【7】僕らは八神少年探検隊・改~第2章いざ洞窟へ


二人でバツ印を挟むように並ぶと、光一が、そっと指先でその印に触れた。

一部、成長した部分に飲み込まれてはいるが、まぎれもなく人の手で刻み込まれた痕のようだ。

「間違いないね」

「ああ。きっとこの近くにあるぜ」

二人で顔を見合わせてニヤリと笑うと、同時に根っこの間に手を這わせ始めた。

編んだように絡まっているツタや葉っぱを引きちぎりながら、なにかそれらしきものは無いかと、辺りを探ってみる。

するとふいに、陽平が小さな悲鳴を上げて、手を引っ込めた。

「なに? どしたの陽平」

光一も釣られて、手を引っ込める。

「……なんか……手に付いた」

言いながら、そっと自分の両手を広げてみると、そこには、さきほど光一の手に付いていたものとよく似た、赤茶げた粘液のようなものが、べっとりと付いていた。

それを横から覗き見た光一は、気の毒そうに陽平を見つめた。

「それ、なかなか取れないんだ」

目をぱちぱちさせながら、手の平を見ていた陽平は、周辺の葉っぱやツタに手を擦り付けながら、根っこの間を凝視した。

この液はいったい何なのか。

なぜ洞窟の中だけでなく、こんなところにまで塗布されているのか。

得体の知れない状況に薄気味悪さを感じながらも、陽平は再び、根の奥に手を差し入れた。

年月を経て複雑な様相を呈している木の根っこ。

そこに深く傷つけられたバツ印。

その真後ろを探る陽平の手に、今度はつるりとした質感の物体が触れた。

「……ここになんかある」

陽平は、手探りでその物体を撫でてみた。

根に阻まれて、全体像はよく見えないが、どうやら陶器のようである。

小型のツボだろうか。

丸みを帯びた輪郭が、そう思わせる。

つるつるとした質感の中に、時折、紛れ込んでくる、ぬるりとした感触。

どうやらあの謎の粘液は、このツボと関係がありそうだ。

そのことを光一に伝えると、光一は頷いた。

「とにかく、その……ツボ?……みたいなヤツ、取り出さなきゃ」

そう言って、自分も根っこの中を覗き込む。

ある程度大きいものだったら、こんなツタや根っこぐらいで、がんじがらめになったりしないのだろうが、小さなその物体は、ものの見事に植物に拘束されていた。

二人でツタを引きちぎり、根っこを掻き分ける。

陽平が力いっぱい根っこを両手で広げている隙に、光一が素早くそれを取り出した。

それは高さ二十センチほどの、ツボというよりは花瓶に近い入れ物だった。

口の部分を丸く切り取った板でフタがされているが、一部が傾いているせいで、そこから例の液体が漏れている。

光一が花瓶―――ということにしよう―――を小脇に抱え、慎重に降りていく。そのあとを陽平が続いた。

地面に下りた二人は平らな部分を探し、そっと花瓶を置いた。

白い下地に、赤や黄色の花が描かれているようだが、それもあちこち表面に傷か付いていて、なんの花なのかまでは分からない。

しばらく二人で、いろんな角度から眺めていたが、やがて陽平が言った。

「お宝って、これに間違いないよな」

「うん。そうだと思うよ。なんか意味ありげに隠してあったし」

「こうやって蓋をしてあるところも怪しいしな」

「だね。でもこれ、中身って……」

そこで初めて二人は、不安そうな顔を見合わせた。

「やっぱコレだよなぁ」

忌々しそうな表情で、陽平は自分の手の平を見つめる。

葉っぱや服になすりつけてはみたものの、綺麗にふき取れたとは言い難い。

光一も同じように、自分の手を見つめた。

「ちゃんと水で洗わないと、取れないかもね」

「ああ。……なんなんだろうな、これ」

花瓶を軽く揺すってみると、中からタプタプとした感触が伝わってきた。

感覚で言えば、花瓶の三分の一ほどの量だろうか。

そこまで中身は多くないように思える。

「フタを壊して、中を覗いてみるか?」

「……うん……。って言うか、大丈夫かな?」

「なにが?」

「いや……たとえば……毒とか」

「毒?」

慌てて陽平が手を放す。しかしすぐに、

「なわけねぇよ。子どもが隠した宝物だろ」

「でも、『子ども』って僕たちが勝手に決めつけたことだし……」

「つーか、もう俺たち、触っちゃってるからな」

「……あ」

「今さらだろ。壊すぞ」

言うと、陽平は近くに転がっていた枝を拾い、板のフタに差し込んだ。

もともと歪み傾いていたフタは、いとも簡単に外れた。

フタを放り投げ、ゆっくりと地面に向けて花瓶を傾ける。

ごくりと光一の喉が鳴った。

どろりとした液体が、まるで映画のスローモーションのように地面に滴り落ちた。

もう見慣れてしまった赤茶けた液体の中に、いくつかの固形物が見える。

ぼたぼたと落下する液体が、やがて途切れ途切れになったところで、陽平は花瓶を起こした。




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テーマ : 短編小説
ジャンル : 小説・文学

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神無月 大和

Author:神無月 大和
         

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