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【9】僕らは八神少年探検隊・改~第3章嫌いな人を呪う方法

*  *  *  *  *




「え?」

「だから、知らないわよ、そんな地図」

母親から返ってきた素っ気無い返事に、光一は目を丸くした。

「知らない?」

「知らない」

きっぱりと否定すると、母親は食器を抱えて、居間を出ていった。

「……知らない?」

誰もいなくなった部屋で復唱してみる。

……知らないなんて。

光一は頭を抱えた。

夕方、花瓶を元の場所に隠し、大急ぎで家に帰ってきたが、あいにくと母親はまだ帰宅していなかった。

仕方なく二人は、サッカーなどで時間を潰していたが、母親が戻る前に陽平の家から、「急に親戚の家に行くことになったから、すぐに帰って来い」と連絡が入ってしまった。

不満げな顔をする陽平を見送り、光一は母の帰宅を待った。

しかし、疲れていたのか、そのまま眠り込んでしまい、母に起こされたときは、もう夕飯の時間になっていた。

父はまだ仕事から帰っていないらしい。

今夜は母と二人だけの食卓となった。

そして、ある程度食べ終わった頃合に、光一は思い切って報告してみたのだ。

「お母さんが隠したお宝、僕たちが見つけたよ」と。

ちゃんと地図も添えて。

その答えが、さきほどの言葉だ。

「知らない」

まさかそう来るとは……。

あの宝の地図は、母親が子供時代に書いたものだと、いつの間にかすっかり信じきっていた光一の頭は混乱した。

この家の物置にある以上、関わりのある人物が書いたのは間違いない。

ここは母の実家であるが、そもそもは曾祖母の実家であったという。

三年前に亡くなった祖母もここに住んでいたので、三代に渡って、母側の実家に住んでいることになる。

一般家庭に比べ、それが珍しいことであるのは光一も承知しているが、かと言って、それを不思議に思ったことはない。

むしろ周りの大人たちが、光一の父親に対して、哀れむような視線を送るのが理解できないくらいだ。

時折「婿養子」などという単語が、人伝いに耳に入ってくるが、父親本人がさほど気にしてないようなので、光一も気にしないことにしている。

そういうわけで、母だけでなく、曾祖母らもここで一生を過ごしたことになるのだが、すでに他界しているため、話を聞くことは出来ない。

ぼんやりとテレビを眺めながら、つらつらと考えていると、洗い物を終えた母が、エプロンで手を拭きながら居間に入ってきた。

「それにしてもあんた達ってば、物置は危ないから入っちゃダメってあれほど言っておいたのに……。大切なものもあるんだから、勝手なことしちゃダメじゃない」

母に睨まれた光一は、小さく首をすくめた。

「だって面白そうだったんだもん」

「まぁ、気持ちは分かるけどね。母さんだって子供のころは、あちこち探検に出かけたもんよ」

そう言って母は、懐かしそうに目を細めた。

「宝探しごっこもよくやったわよ、お友達と一緒に。それぞれ自分の大切なものを隠して、互いに探しあうの。一日中やってたわね」

「ふーん」

光一は、笑みを浮かべる母を上目遣いに見ながら、もう一度聞いてみた。

「そのゲームの時にさ、洞窟の近くに花瓶を隠したとか……」

「だから、花瓶なんか隠してないってば。確かに洞窟の周辺で遊んだことはあるけど……。あの洞窟、真ん中以外はわりと浅いから、よく入り込んで遊んだわね」

「そうなんだ。僕なんか怖くて、中に入るのためらったけどなぁ」

「情けないわねぇ。あれくらいで怖がってどうするのよ。そんなんじゃ女の子にモテないわよ」

いたずらっぽく笑う母に、光一は頬を膨らませた。

「別にモテようなんて思ってないよ」

「はいはい。……まぁ確かに、勝手に洞窟に入って遊ぶなんて、あまり誉められてことじゃないしね。途中、塞がれてるのもあったし」

「……真ん中の洞窟のこと?」

「そうそう。あんたたちも入ったんでしょ。あの洞窟、脇道があるのは知ってたけど、途中から道が塞がれちゃってたから、母さんたちもそれ以上は進んでないの」

「ふーん。じゃあ当時から、あそこは封鎖されてたんだね。いつ頃から使われなくなったんだろ」

「さぁ。おばあちゃんの……光一からみたら、ひいおばあちゃんね……ひいおばあちゃんの子供の頃に戦争があって、この辺りも空襲を受けたらしいから、すくなくともその時は使われてたわけね」

母がテーブルに頬杖を付きながら言う。

「戦争が終わったのが六十七年前だから、その頃じゃないかしら、使われなくなったのは。爆弾落とされる心配がなくなったんだから」

「六十七年かぁ」

まだ十一年しか生きていない光一にとっては、それはドラマで見る時代劇と、なんら変わりの無いほどの昔の出来事である。

その戦争で、日本が壊滅的な被害を被ったこと程度は知っているが、それも御伽噺のような感覚でしかない。


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テーマ : 短編小説
ジャンル : 小説・文学

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神無月 大和

Author:神無月 大和
         

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