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【10】僕らは八神少年探検隊・改~第3章嫌いな人を呪う方法



「それにしても、なんであの脇道は塞がれてるんだろ」

首を捻る光一に、母が言った。

「そりゃあ、危ないからでしょ。あんた達みたいな無鉄砲な子供は、いつの時代にもいるもの」

「危ない……かなぁ。慣れてない僕たちだって、懐中電灯無しでちゃんと降りれたよ。中は綺麗に片付いてたし、危険ってことはないと思うんだけど」

「知らないわよ、そんなこと。母さんが塞いだわけじゃないんだから。昔の人には昔の人なりの考えがあったんでしょ。それを壊すようなことをしちゃいけないわ」

「分かってるよ。だからちゃんと花瓶は戻したってば」

……中身は少ししか残ってないけど。

心の中で付け加えて、光一はテレビに視線を戻した。

テレビでは、タレントたちが都市伝説の映像を見ながら、あーだこーだと自説を振り回して、きゃあきゃあ騒いでいる。

番組は、古来から伝わる陰陽道に始まり、中世ヨーロッパ各地で行われていた呪法、果ては現代で報告されているUFOなど、怪しげな説満載で進められている。

光一は、こういう番組が大好きだ。

確かな裏づけをされた報告談はまれにしかないが、だからこそ、わくわくするのだと思う。

それぞれの現象は、なにかしらの科学的な解釈が出来るのだろうが、科学がいまほど発達していなかった古来人が、それらを超自然的な物に結び付けて考えていたのを馬鹿にする気など毛頭ない。

むしろ、その豊かな想像力に感服する。

テレビでは折りしも、実際に日本で行われてた呪いの作法について語られていた。

日本に伝わっている呪法のほとんどは、中国から伝わった陰陽道が元になっているらしい。

陰陽五行説に基づいた呪法が、貴族の間では、権力争いに使われていたことは、よく知られているところだ。

その呪法を含めた陰陽術を扱う人を陰陽師といい、日本でもっとも有名な陰陽師は、安倍清明だろう。

清明をモチーフにした映画や本は巷に氾濫しているので、興味のない人でも、名前ぐらいは知っていると思う。

ただ、古代神や聖徳太子のように、その逸話には後世の人々の創作が含まれている可能性が高い。

清明は、一度死して蘇ったとされているが、それは言わずと知れたキリスト教の説話であるし、また、清明の母とされている葛の葉は、インドから逃げてきた荼枳尼天という白狐神をモデルにしたとも言われている。

余談だが、聖徳太子の母である推古天皇の処女受胎や、太子が馬小屋で生まれたという話も、キリスト教からヒントを得て作られたと言われている(釈迦をモデルにしたという説もある)。

一度に十人の話を聞くことが出来たというのは、ギリシャ神話からの引用だったか。

このように日本の歴史は、世界各地に伝わる伝説・逸話の集合体なのかもしれない。

その集合体に、日本独自の概念が合わさったものが、民間信仰なのだろう。

例えば、ひな祭り。

女児の健やかな発育を願う慣習だが、これは元々、陰陽道の呪術で使われていた人形(ヒトガタ)が変化したものだという説がある。

原型となっている呪いの藁人形だが、この人形に子らの厄を移し、川に流すことで、子どもたちの健康を願ったとされている。

民間信仰は、無名有名を問わず、無数にある。

当然のことながら光一が住む地域にも、他県では見られない風習がいくつかある。

一例として挙げるなら、河童だろうか。

普通河童といえば、川に棲み、牛や子どもを川に引きずり込んだり、相撲を取ったりと、いたずら好きな妖怪として認識されていると思うが、光一の住む地域では、河童は水神であるとされている。

背丈はわずか五十センチほど。

井戸の奥深くに棲み、きちんと祀ることで、澄んだ水を人間に提供してくれるのだという。

ゆえに、井戸を塞ぐときには、まずは河童様に新しい井戸を用意し、お引越しをさせてから埋めないと、人間に災いを成すと言われている。

井戸が用意出来ないときは、手厚く祀って神界に帰って頂き、再び家に入り込むことがないよう、家の四方を法力によって封鎖するのだという。

こうなるともはや、水神といえど、扱いは悪鬼妖怪と変わらない気がする。

昼間は井戸底に身を潜め、夜になると井戸から這い出し、散歩を楽しむのだそうだ。

河童の散歩に行き当たった人間は、河童を自宅に招きいれ、手厚く接待しなければ機嫌を損ねて、良い水を与えてくれなくなると言われている。

調べてみれば、もっとたくさんの俗説が出てくるだろう。

……夏休みの自由課題で調べてみるのもいいな。

光一がそんなことを考えていると、お茶をすすっていた母が、ふと顔を上げた。

「そう言えば……」

「え?」

視線を向けると、母は遠くを見るようにしばらく沈黙したあと言った。

「花瓶じゃないけど、ツボに願いを託して、それを埋めると願いが叶うっていうおまじないがあったわね」

「おまじない?」


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テーマ : 短編小説
ジャンル : 小説・文学

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神無月 大和

Author:神無月 大和
         

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