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【14】僕らは八神少年探検隊・改~第4章 龍神伝説と河童



「どんな本ですか? 書名でも著者名でも、どちらでもお探しできますよ」

言いながらパソコンを指差す。

画面にはいつの間にか、検索画面が表示されていた。

「あ、いや。名前は全然分かんないんです。というか、どういう本を見ればいいのかも分からなくて……」

もじもじと言う光一に、女性司書は首を傾げた。

「何か調べてるのかしら?」

「ああ、そう! そうです。調べたいことがあるんです。でもどういう本に載ってるのか分からないんです。一応、自分達でも調べてみたんですけど」

実際は、おまじない本を数冊めくっただけだが。

「何を調べてるの?」

「うーん、何て言うか……」

陽平が言葉を選ぶように答えた。

「おまじないのような……願い事が叶う、みたいな。嫌なやつを懲らしめるだったっけ? でも、おまじないとは少し違う感じで……。うーん、どう言えばいいんだろ」

言いよどんだ陽平の横から、光一が言葉を挟んだ。

「昔から伝わっている、おまじないみたいなものです。たぶん六十年以上前には使われていたけど、いまは誰も知らない、みたいな」

……花瓶の中身の一部が、塞がれた脇道の内部にあったということは、花瓶が持ち込まれたのは、少なくとも塞がれる前。

終戦が六十七年前で、その頃はまだ、あの防空壕は使われていたわけだから、塞いでしまったのは終戦後である可能性が高い。

光一の母は、母の祖母……つまり光一の曾祖母から、子ども時代におまじないの話を聞いたと言っていた。

母はいま三十代後半なので、少なくとも三十年前。

さらに、曾祖母はすでに他界しているが、生きていれば八十歳ぐらいで、終戦時といえば、十二~三歳あたりだろうか。

『いろは』という暗号や、あの高さの位置に花瓶を隠せたことを合わせて考えると、曾祖母の年齢がちょうど状況に合致する。

母は、おまじないの正確な内容を覚えてはいないようだったが、それはつまり、いまの時代には聞かれない方法だからではないだろうか。

だから忘れた。

母に語って聞かせたという曾祖母は、もちろん詳しく知っていたわけだけど、それはかつて、自分が実行したおまじないだったからではないだろうか。

あれこれ考えながら言うと、女性司書は少し考えるようにしてから言った。

「そういうことは、どちらかと言うと民俗学に入るんじゃないかしら。それも全国的なものではなくて、郷土史ね。土地に根付いてる風習や慣習を調べてみるといいかもしれないわ。郷土史は……社会科学のコーナーにある、民俗学の棚を見てご覧なさい。このあたり一帯の郷土史がたくさんあるから」

示された方向を見ると、館内の奥のほうに、『社会科学』と書かれた案内板が天井からぶら下がっているのが見えた。

その下に小さく『歴史・郷土史』と記載されている。

そこに向かいながら、光一はさっき思いついたばかりの自説を、小さな声で、陽平に語って聞かせた。

「すげぇじゃん、光一。なんか名探偵みたいだぜ」

「えへへ。そっかな」

誉められた光一は、照れくさそうに頬を赤らめた。

「そうだよな。いま流行っているおまじないじゃなくて、昔のおまじないを調べないといけなかったんだよな。うん、冴えてるぜ!」

「誉めるのはもういいよ、陽平」

ますます赤くなりながら、光一は足を早め、

「ここだね、民俗学は」

と、目的の場所で立ち止まると、棚を見上げた。

大小さまざまな本がぎっしりと並べられている。

光一は背表紙を一通り眺めると、「これじゃない?」と棚の一角の指差した。

『郷土について』と書かれた仕切りの場所から、二人が住んでいる八神町の本が何十冊も置かれていた。

その中から、『八神町の神話伝承』『八神の民間信仰』『今昔・八つ神村(現・八神町)』など、いくつかの本を手に取ると、読書コーナーへ行き、さっそく本を開いた。

彼らが住む八神町は、戦前までは八つ神村という小さな村であった。

名が表す通り、村には神話が数多く伝わっており、小さくも歴史深い土地柄であったことが窺い知れる。

八つ神村は、特に畜産で生計を立てていたが、戦後、近隣の村と合併され、名も八神(やがみ)町に改正された。

確か、二人が通う八神小学校の図書室にも、町の伝承に関する本があったはずだ。

同じことを陽平も考えたのか、そっと光一に、

「なぁ、これだったらわざわざここに来なくても、学校の……」

「しっ。それはもう言いっこ無しだよ。少なくとも学校よりは本の数は多いんだから。資料はたくさんあった方がいいでしょ」

「まぁ、そうだけど」

仕方無さそうに頷くと、再び本に目を落とした。

しばらく夢中で目を走らせていた光一は、あるページでふと目を止めた。

それは『龍火山(たっかざん)風土記』という本であった。

龍火山とは、八神町を含むいくつかの町をぐるりと取り囲んでいる連山の一つである。

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テーマ : 短編小説
ジャンル : 小説・文学

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神無月 大和

Author:神無月 大和
         

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