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【18】僕らは八神少年探検隊・改~第5章 日記



【七月○日】
サイレンはもう聞こえないけど、それと引き換えのように、外で大きな爆発音が聞こえる。村が攻撃されてるみたいだ。どうしよう。おうちがなくなっちゃう。お母さんも心配そう。

【七月▲日】
外が赤い。夜が明けたと思ったら、村が火に包まれているところだった。たぶんお家も燃えちゃってる。大切なものたくさんあったのに。洞窟の中でみんな、声を殺して泣いている。なんでこんなことになったんだろう。

【七月○▲日】
村で一番足の早い雪音ちゃんが、村の様子を見に行くことになった。でもまだ外は赤い。たぶん、明日行くことになるだろう。

【七月□日】
雪音ちゃんが帰ってきた。私のお家は無事だったみたい。良かった。思わずお母さんにそう言ったら、怒られた。家がなくなった人もいるんだからと。でも、そう言いながら、お母さんも安心した顔をしていた。

【七月□□日】
最近、避難用に保存しておいた食物の減りが早いと、飯塚のおじいちゃんが怒っていた。誰か盗み食いしているだろうと。そんなはずないのに。なんでそんな簡単に、ひとを疑うんだろう。悲しい。

【七月▲□日】
夜中、ふと目を覚ましたら、洞窟の奥に、小さな生き物が走っていくのが見えた。ちゃんと二本足で立っていたけど、全身がねっとりと濡れて、やや光っているように見えた。あれはなんだったんだろう。
早くお家に帰りたい。でもまだ、外に出てはいけないと、飯塚のおじいちゃんが言っていた。今頃アメリカ兵が村を歩き回ってるから、みつかるとアメリカに連れて行かれて、帰ってこれないって。怖いな。

【七月▲△日】
たまに、ひたひたと洞窟内を歩き回る音がする。みんな一固まりになっていて、洞窟の奥には誰もいないはずなのに。
念のため、みんなの顔を確認してみた。うん、みんなちゃんといる。
じゃあ、あれは誰。
みんなは気付いていないようだ。

【七月△日】
雪音ちゃんとタエ子ちゃんの三人で歌を歌っていたら、お母さんたちに怒られた。歌声が外に漏れて、アメリカ兵に見つかったらどうするの、と。外はもう白い。アメリカ兵なんかもういないんじゃない、と言ったら、また怒られた。子どもは黙っていなさいと言われた。
みんな、苛立ってるみたい。早く帰りたい。

【七月○●日】
飯塚のおじいちゃんが、洞窟内に持ち込まれていたツボや花瓶を持ってきて、これでアメリカ兵に呪いをかけようと言った。龍神様へお願いするのだそうだ。みんな、やろうやろうと張り切っていた。みんな、大人も子どもも、アメリカを呪ってやると言いながら、とっても怖い顔をしていた。私はそれが怖い。みんなが怖い。

【七月■日】
私と雪音ちゃんは、ツボに入れる果物を探しに、外に出ることを許可された。もしアメリカ兵に見つかっても、ここのことは絶対に喋らないと約束した。久しぶりに吸う外の空気は、とっても美味しかった。
谷の上から村を見た。
黒く焼け焦げた家や学校が見えた。
ひどい。悲しくなった。誰もいい思いなんかしてないのに。
なんで戦っているのか分からない。
雪音ちゃんにそう言うと、雪音ちゃんは悲しそうに笑って、そんなこと言ってはいけないよと言った。
天皇陛下を信じようと言った。私は、分かったと言った。
後ろから誰かが付いてきたような気がしたから、私は怖くなって、雪音ちゃんの手をつかんで、一生懸命走った。
後ろには誰もいなかった。
まだ青い無花果や、山苺をたくさん摘んで帰ったら、遅いと飯塚のおじいちゃんに怒られた。
お母さんは、ほっとした顔をしていた。
それが嬉しかった。

【七月■■日】
今日はみんなおかしかった。
口々に汚い言葉でアメリカをののしり、ツボや花瓶につぎつぎと果物やお花を詰め込んでいた。
これが龍神様への供物であり、これをしばらく続けていると、龍神様がアメリカに天誅をくだすのだという。
お前もやりなさいとお母さんに言われ、私は、まだ固い無花果を手に取った。
みんなの真似をして、死んでしまえと言おうとしたが言えなかった。
言いたくなかった。
アメリカはにくい。村を壊した。
でも、そんな言葉を吐いたら、私もアメリカと同じような気がした。
だから言ったふりをして、無花果をツボに投げ入れると、すぐにそこを離れた。
みんなが怖い。
洞窟の奥から、誰かがこっちを見ていた。
みんなツボや花瓶の周りで笑っている。私はゆっくり近寄った。
そこにいたのは、小さな小さな緑色の人だった。
唇は黄色く突き出ており、服は着ていなかった。でも怖くなかった。
ポケットに山苺が一個、残っていたからそれにあげたら、おいしそうに食べて、また洞窟の奥に帰っていった。
みんなまだ笑っている。


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テーマ : 短編小説
ジャンル : 小説・文学

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神無月 大和

Author:神無月 大和
         

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