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【21】僕らは八神少年探検隊・改〜最終章 再び洞窟へ


*  *  *  *  *




日記はここで終わっていた。

二人は大きく息を吐くと、同時にその場に座り込んだ。

「……なんか……すげぇな、お前のひいばあちゃん」

「うん。龍神様とお友達になっちゃったんだ」

「これ……本当の話なのか?」

「たぶん……。だって日記だよ。他のこともリアルに書かれてるし」

光一が日記に目を落としながら言う。

「大体、日記に嘘書いたって仕方ないじゃない」

「それはそうだけど……。緑の小さな人って、やっぱ河童のことだよな」

「うん、たぶん」

「……本当にいると思うか、河童」

「う……。うん」

「……本当に?」

「ん」

聞き返される度に、光一の声は小さくなっていったが、思い直したように顔を上げると、

「うん!」

とはっきり頷いた。

「んじゃまぁ、もう一度行ってみっか。洞窟に」







一週間ぶりに来た洞窟の風景は、さほど変わり映えのしないものだった。たった一週間では仕方ないことだけど。

二人は洞窟を覗いたあと、中には入らず、岩の上に立って谷間を眺めた。

花瓶が隠してある場所は、ここからちょうど真下に当たるので、この位置からは見えない。

七十年近く前、この谷で、光一の曾祖母と龍神様が友情を育んだのだ。そう思って眺めてみると、いつもはただ美しいだけのこの風景も、なんだか厳かなものに見えてくるから不思議だ。

二人は無言で互いに合図をすると、谷間に向けて、崖を降りて行った。

子どもが降りていくには少々無謀な地形ではあるが、やってやれないことはないと判断したのだ。

せり出した木の枝に捕まりながら、慎重に足を下ろしていく。

運動神経のいい陽平は、わりと順調に下っていくが、あまり運動が得意ではない光一は、時折足を滑らしながら、それでも陽平のサポートのもと、どうにかバツ印の近くまで降りることが出来た。

息を切らせている光一を尻目に、陽平は草を掻き分けて、隠し直した花瓶を取り出した。

花瓶は、一週間前と同じ場所にあったのだが……。

「あれ?」

陽平が首を傾げた。

「なに? どしたの?」

ようやく息を整えた光一が聞く。

「いや……なんかこの花瓶、変わってね?」

「変わってる? 何が?」

「俺、あの時ちゃんとフタ閉めたぜ。きっちりハメ込んだの、覚えてるもん」

「ああ、そうだったね。変な匂いがしてたから、力いっぱいフタを花瓶にねじ込んだんだよね」

「………開いてるぜ」

そう言って花瓶の口を、光一にも見えるように傾けてやった。

陽平が、これでもかと言わんばかりの力でねじ込んだはずのフタは、確かに外れていた。

「……なんで?」

「それを俺が聞いてる」

二人はしばらく見つめ合ったあと、ほぼ同時に、きょろきょろと辺りを見回した。

「まさか龍神様?」

「んな馬鹿な」

否定しながらも、二人は目を凝らして、緑色の小さな河童がいないか探した。

「いやいや、まさか。いるわけねぇよ、河童なんて」

「そうだよね。いるわけないよね」

「お前さっき、いるって言ってたじゃん」

「それとこれとは話は別で……」

「別じゃねぇし」

引きつった笑顔を見せながら、二人はとにかく花瓶を元の位置に戻した。

ひらりと陽平が飛び降りる。

光一も真似をして飛び降りようとしたが、すぐに諦めると、またゆっくり底まで降りた。

地面に立った二人の目の前に、上の洞窟に続いている抜け穴の入り口がある。

陽平が首だけを伸ばして、中を窺ってみた。

とくに変わったことはない。

相変わらず、ひんやりとした空気が流れていた。

「ねぇ、陽平。いっこ気になることがあるんだけど」

陽平の背中に隠れるように、抜け穴を覗いていた光一は、そう言って中を指差した。

「中にも花瓶の中身がこぼれてたでしょ。あれは結局、なんだったんだろう」

「ああ、そういやぁ、それについては答えが出てなかったな」

「うん。でね、いま僕、ちょっと思いついたんだけど」

「なんだ?」

光一は、気味悪そうに辺りを眺めていたが、やがて言った。

「やっぱ本当に河童って……龍神様っているんじゃないかな」

「うん?」

「僕が洞窟の中で触ったとき、ねちゃっとしていて、手触りがすごく気持ち悪かったんだよ」

「うん、そうだったな。それで?」

「もし、あれが当時の残骸だったら、いくら洞窟内とはいえ、七十年近くも経ってるんだもん。きっと水分なんか抜けて、カラカラになってると思うんだ」

「だな。でもある意味、みずみずしかったと」

「そう。花瓶の中身とほとんど同じだった」

「ということは?」

「つまり、あの花瓶を持ち出して、あの洞窟内に持ち込んだ何者かがいるってことだよ」


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テーマ : 短編小説
ジャンル : 小説・文学

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神無月 大和

Author:神無月 大和
         

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