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【終】僕らは八神少年探検隊・改〜最終章 再び洞窟へ


「それが河童か」

「うん」

「なんで?」

「きっと、いたずらのつもりだったんじゃないかな。かつて友情を育んだ人間の子孫が遊びに来たことを知った河童が、ちょっとしたいたずらを決行した……」

「懐かしくて、か」

「そうじゃないかな。ひいおばあちゃんもずっとこの土地に住んでたけど、戦争が終わったあとの日本は、混乱期に入ったって聞いたことがあるから、ここに来る暇もなかったんじゃないかな。ただ、僕のお母さんにおまじないの話をしたぐらいだから、忘れたわけじゃなかったんだ。それを龍神様も知っていて、約束通り、ずっとこの地にいた」

そこでふと、光一はある事を思い出した。

洞窟内で、あの液体に手を触れる直前、誰かが光一の肩を叩いたのだ。

あの時、光一らのほかには誰もいなかったはずだし、唯一洞窟内にいた陽平は、光一の前にいた。

後ろから光一の肩を叩くなんて真似、出来ないはずだ。

しかし誰かが確実に叩いた。

確か曾祖母の日記に、河童の存在には他の誰もが気付いていないと書いてあった。

幽霊と同じように、見える人と見えない人がいるのではないだろうか。

曾祖母は見えたのだ。だからこそ、河童の方も曾祖母に親近感を持った。

そのひ孫がやって来たのだ。河童は嬉しくなって、つい手が出てしまったのだろう。

そう考えた方が楽しいではないか。

「つーか大体、なんでこんな山ン中に河童がいたんだ?」

まだ納得できない顔つきの陽平が、さらに疑問をぶつけて来た。

「確か洞窟の近くに古井戸があったんだよ。詳しい場所までは忘れちゃったけど。もともとはそこにいたんじゃないかな。八神の河童は、井戸に住むから」

「ああ、そんなこと言ってたな。なるほど」

手を打った陽平は、ようやく観念したように言った。

「つまり本当に河童はいるってことか」

「そういうことになるね」

「……花瓶のフタ、開いてたな」

「開いてたね」

「……じゃあ、きっといまもこの近くに……」

「いると思うよ」

きっぱりと断言するように言った光一は、

「でも、僕らには、その姿を見ることは出来ないんだ」

と、やや悲しげに呟いた。

しばらく無言で谷間の風を感じていた二人は、やがてくすくすと笑い出した。

「一件落着ってことでいいな」

「うん。ちゃんと解決したね、『たからのちず』事件」

「やれば出来るじゃねぇか、俺たちも」

「日本はまだまだ安泰だね」

「そういうことだ」

そうして陽平は、大きく背伸びをした。

「さて、帰るか」

「うん。せっかくだから、洞窟を通って帰ろうよ」

「お? 怖がりのくせに思い切ったこと言うじゃねぇか」

「怖がりじゃなくて慎重派だってば! ……この崖を登るより安全そうだし……」

「そんなこったろうと思ったよ」

呆れたように笑った陽平は、くるりと踵を返すと、元気良く抜け穴の入り口に入って行った。

光一も後を追いかけようとしたが、なんとなく気になって、もう一度谷間を見回した。

光一たちとはちょうど反対の方向、背の低い木々の間で、なにか緑色のものが揺れたように見えた。

……あの木は無花果じゃなかったかな?

光一は、ぶるると身を震わすと、今度こそ勢いよく陽平の後を追って、抜け穴に入って叫んだ。

「気をつけてねっ。もしかしたらまた花瓶の中身がその辺に……」

光一の忠告もむなしく、ほぼ同時に、陽平の悔しそうな叫び声が聞こえた。

光一は、お腹を抱えて笑った。

静かだった洞窟内に、少年たちの楽しげな声が響いていた。




~完~


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テーマ : 短編小説
ジャンル : 小説・文学

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神無月 大和

Author:神無月 大和
         

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